インタビュー記事
コロナ禍で有名になった補助循環 ECMO（エクモ）。この先駆けのV-A(静脈動脈)バイパスの心臓手術後の適用のパイオニアと呼べるのが 見目 恭一 先生です。見目先生は、埼玉医科大学病院に臨床工学技士の専門部隊となる MEサービス部を開設しました。埼玉医科大学総合医療センターの臨床工学部、そして、国立国際医療センターを含め10病院を越える心臓外科をサポートする人工心肺技士の育成に関わってこられました。臨床工学技士という医療職種がどうやって生まれたのか知る臨床工学のレジェンドに、ライフワークとされた補助循環や心臓移植のドナー心臓摘出のお話を伺いました。
人前に出るのは苦手で、とてもシャイな性格でした。
――小学校の学芸会
小学校から高校を卒業するくらいまで、人前に出て何かをするなんてことは、大の苦手でした。そんな私でしたが、小学校4年生のときに担任の先生から、学芸会で合唱の「指揮をやりなさい」って突然言われたのです。なぜ、私がそこに立たされたのかは、そのときはよくわからなかったんですがね。担任の先生は、私の何かを見ていてくれたんでしょうね。無我夢中でたくさん練習をしました。指揮しているときは、もうみんなの顔も見えない。ただ、指揮棒を振っているという感じでした。
――鉱石ラジオとの出会い
小学校5年生のときの教頭先生は、とても面白い先生でした。理科を教えてくださったのですが、そのとき、理科が好きになったんです。夢中になっちゃったのは、鉱石ラジオ。電気がないところにアンテナを貼って、それを導線で引っぱって鉱石ラジオに繋ぐと、レシーバーから音が出る。なんで電気がないのに音が出るんだと。それがわからないときの驚きで、これが理科への興味につながったんだと思います。
――養鶏の手伝い
私の実家はもともと農業をやっていたんですけれど、3,000羽の鶏卵を採取する養鶏をやっていました。昔の養鶏っていうのは、卵から孵った雛を育成して、卵を産むまで大きく育てるんです。卵から孵った直後っていうのは、もう保温もできないし、餌もあんまり食べられない。丁寧に保温室の中で育てて、冬なんか本当に大変です。なので、高校を出て大学を卒業するまでは、結局、家を開けられなかったですね。鶏がいるから。水と餌のために、誰かが残ってみていないといけない。そして、毎日、卵が3,000羽から産まれる。大きな卵と小さな卵、それぞれ選別して100 kgくらいの卵を毎日処理していかなければならないんです。夕方には、卵を集めて、それをきれいに一個一個拭く。暖かいときはいいんですが、冬は冷たいんですよね。そんな感じで動物とは触れ合う機会が多くて、犬や猫、ウサギにカナリア、シロネズミ、鳩なんかも飼っていました。
臨床工学技士になるまで
――卒業研究は雷
宇都宮大学 工学部 電気電子工学科を選んだきっかけは、やっぱり鉱石ラジオが影響していると思います。ただ、高校卒業のギリギリまではあまりどこで何をやりたいっていうのは明確ではありませんでした。なんとなく大学に入っちゃったんです。私の所属した研究室は、もともと東芝の研究所を出た 国分 里美 先生で講師として着任されました。東芝（現・キヤノンメディカル）にいたときは、医療機器を開発されていました。ただ、私がやった研究は雷。宇都宮は雷の産地として有名で、地域の特性として雷を追いかけるレーダーを持っていたんです。雷で危ないと人が家に入る頃、我々は雷が出たって言って観測に出かけました。研究テーマは、「電磁場を使った雲間放電と落雷を見分ける方法」を調査していました。卒業して、さぁ、どうしようとしたときに、医療機器に関係する企業に行きたかったんです。ただ、当時は、そういった会社もなかなかなくて、可変抵抗を作っている専門メーカーだった帝国通信工業という会社に入って、品質管理を任されて、6年間務めていました。
――運命的な分岐点、神山 五郎 先生
1970年頃の電気会社って、週休2日になって、給料もそんなに悪くなかったんです。だから、仕事上のトラブルや悩みも特にありませんでした。ところが、私の妻の恩師が 神山 五郎 先生というお医者さんだったんですが、ハンディキャップのある子供に対する専科の教授になられたんです。妻と結婚するタイミングで、神山 五郎 先生と面会することになった。これが私の運命の分岐点でした。
――男は30前までならやり返しができる
神山先生に会ってみると、「君は何をしているんだ？」、「何をやりたいんだ？」、「やりたいことに満足しているのか？」と問われました。「まぁまぁ、こんなところで、程々にしています。」と伝えると、「それは真からやりたいことをやっているのか」と。続けて、「男はね、30歳前までならやり返しはきくぞ」ということを言われたんです。それで、研究室の話をして、医療機器のお話をしていたら、「ああ、わかった。わかった。」とおっしゃって、東京大学 医学部の 渥美 和彦 先生の医用電子の研究室（人工心臓の研究）におられた 桜井 靖久 先生を紹介されました。ちょうどその頃、桜井先生は東京女子医科大学（以下、女子医大）の心臓血管研究所の理論外科の２代目教授に着任されたばかりでした。私は桜井先生が女子医大に移って1週間も経っていないときに研究室を訪問しました。座るところもない状況だったんですが、話は聞いてあげると言われました。「メーカーに行きたいの？」、「研究したいの？」、「それとも病院に行きたいの？」と言われたので、「先生、病院で仕事はあるんでしょうか？」と逆に伺ってみると、「そんなことは聞いてみなきゃわからん」とおっしゃって、私が本当にお世話になった尾本 良三 先生（当時・三井記念病院）を紹介されたんです。
――尾本 良三 先生との出会い（元・埼玉医科大学附属病院長）
桜井先生に紹介されて、次の火曜日に尾本 良三 先生に会いに行きました。ちょうど私がいった時は、IABP（大動脈内バルーンパンピング）を使って動物実験をされていたんです。真剣にお話をしてくださるのですが、全くわからないんですよ。知らない外国語を聞いているみたいでした。当時の私の専門じゃないので。「ところで、君は何をしたいの？やる気はあるのか？」と問われたので、「先生のお話ははじめて聞かせてもらいました。やる気はあります。」と伝えたら、「やる気があるなら、明日からアルバイトで来なさい」と言われて、次の日、三井記念病院に入ったんです。それから二週間後に臨床の責任者をされていた方が自治医科大学のMEセンターを立ち上げることになって，私がそのポストに着任することになったのです。
三井記念病院から埼玉医科大学に
――三井記念病院でいきなり人工透析
私は、いきなり三井記念病院の臨床現場で仕事をすることになりました。オン・ザ・ジョブ・トレーニングです。先輩のやるのを見ながら色々教わりました。もちろん、マニュアルもあったので、それらは読んでいました。最初の半年は心臓カテーテル検査、次の半年が人工透析でした。当時の人工透析は、今のダイアライザーと異なるバッチ式透析でした。朝は清潔な香りの透析室も、夕方になるとトイレの中にいるような匂いの部屋に変わっちゃうんです。還流液を作って人工透析装置を管理する業務をしました。その後、人工心肺業務に関わったんです。
1978年三井記念病院でシート型人工心肺組み立て中
1978年三井記念病院でシート型人工心肺充填中
――わずか2年で埼玉医科大学に
私の三井記念病院で業務期間は2年弱。この頃、埼玉医科大学には心臓血管外科がなかったので、尾本先生が心臓血管外科を立ち上げることになりました。私は、麻酔科の教授がME（Medical Engineering）の仕事をやる人間を求めているから、まずは先に行って、仕事をしてきなさい。尾本先生が後で追いかけるからというお話でした。私はこのことをよく覚えているのですが、人工心肺業務を半年しかやっていませんから、とてもわかったなんてレベルじゃなかったんです。
――臨床工学技士という医療職の雛形作り
尾本先生は、米国・ボストンのマサチューセッツ総合病院に三井記念病院から留学されていたのです。帰国されたときに、臨床スタイルが日米で全く違う。米国では医師が手術室に入ったら、手術に専念していたそうです。ちょっと振り返ってみると、人工心肺を操作している方が黙々とそれだけを作業していた。あなたはどうしてこの仕事だけをしているのかと聞いたら、専任の人工心肺技士だったそうです。当時、日本で5万件の症例に対して、米国は20万件の手術があったんです。だから、その領域だけでも人工心肺を毎日回して（操作して）、仕事がちゃんとある世界でした。そういった尾本先生のご経験から米国スタイルで医療現場を立ち上げたいと想いが生じたようです。人工心肺と人工透析、そして、医療機器管理などを統合した部門の設立を考えられたのです。尾本先生のボスであった木本 誠二 先生が三井記念病院の初代病院長になっていました。ただ、「資格がないからどうするんだ？」と尾本先生は木本先生に尋ねられたそうです。尾本先生は私が責任を取るからとおっしゃられて、日本ではじめて臨床工学技士という職種の雛形を作られたのです。これが私の人生の大きな転換期でした。
――動物実験
この頃は心臓を止めるためのお薬，心筋保護液がまだ開発されていませんでした。だから、当時、心臓手術をする際には、心臓が耐える27〜28℃くらいまで血液の温度を下げて、冠動脈の血液を遮断して15分間心臓手術、３分間冠血流を再開､15分間心臓手術、３分間冠血流を再開の操作を繰り返して手術を行なっていました。今の若い方はほとんど知らないはずです。現在は心筋保護液を用いて心停止をしての手術法で心筋保護法が確立された形ですから。この当時、心臓手術の候補になる疾患は40代から50代の若い方の心臓が中心で僧帽弁狭窄症が大半でした。あとは子供のASD（心房中隔欠損症）とかVSD（心室中隔欠損症）で比較的軽症な症例です。だから、心臓も耐えられたんです。お年を召した方の心臓ではこの方法では耐えられない。そんな時代でした。だから、心臓を止めるお薬をどうやって上手に使うことができるのか？人工心肺装置を使って動物実験をしていました。そのお手伝いを週2日で実施をしていました。最初、心臓手術は週に1日でしたが、おおよそ2年後には週2日から3日の手術となりました。当初は三井記念病院から埼玉医科大学に移動したのは私一人しかいなかったので、手術の日だけは私の同僚にも来てもらって、その時だけ2名で手術にあたっていました。今では到底考えられない日常を送ってきました。
――MEサービス部のはじまり
私は尾本先生から埼玉医科大学病院で心臓手術ができるような部隊、MEサービス部を作ってくれと指示されたものですから、それが最優先でした。だけど、最初は部屋もなくて、手術室の隣の準備室があって、そこが割り当てられました。手術に必要な備品関係をそこに入れておく。ただ、部屋としてではなくて。私の机は、ナースステーションの端っこに配置してもらいました。部屋をもらえるまでに5年くらいそこで暮らしていました。さらに心臓血管外科のICU（集中治療室）を作りに関与ました。当時、ICUに男性看護士、N氏がいたんです。そこで、ICUに行ったときに彼を一本釣りでMEサービス部に引き抜いたんです。緊急手術などの時は、私一人ではどうにもならないので。N氏が入ったのはMEサービス部を立ち上げて、1年後の1979年くらいでした。その後、3年くらいして同じく男性看護士のS氏が加わりました。N氏は後に公立昭和病院の心臓外科立ち上げに関与した方です。そして我々は、心臓血管外科関連施設開設に伴い人工心肺業務を担う若手人工心肺担当技士を約半年間預かって2名ずつ養成してきました。一人で人工心肺を回せるまで訓練し、一人でも大丈夫だなというところまで見届けて、施設に返す。こういった試みは全国でもほとんどやっていなかったと思います。私が所属していた埼玉医科大学病院と同じように埼玉医科大学総合医療センターのMEサービス部（現・臨床工学部）も立ち上げました。このとき、派遣したのがM氏（現・埼玉医科大学総合医療センター臨床工学部 技士長）です。
V-Aバイパスとドナーハート
――補助循環の先駆け
私がメインで取り組んできたことの一つが補助循環（心肺機能の補助・代行をする装置）でした。色々な患者さんの容態があって、なかには手術室から出ることができない、人工心肺から離脱できない患者さんもおられました。ご自身の心臓だけじゃ生きられないようなとき、補助循環(V-Aバイパス)をつけてICUに戻す。そういった道具立てがどうしても必要だったんです。当初の埼玉医科大学病院の心臓血管の手術室は６階、その後５階で、ICUは7階にありました。ICUに戻るにはエレベータで１階上がる必要があった。ところが、当時は補助循環装置が無く、急遽、補助循環のV-A(静脈動脈)バイパス（患者の心臓と肺を用いず、酸素加された血液を全身に循環する装置）で対処したんです。これは、通常の人口心肺装置と同じで、貯血槽凝視方式であった。
――目を離すことができない
リザーバー（貯血槽）から目を離すことができないんです。人工心肺と同じ格好で運転する必要があり、寝ることができない。送血と脱血のバランスが崩れたら、リザーバーが空っぽになっちゃう。患者さんの命のある限りそれを続けなければならない。これが非常に大変な作業だった。
――新たに開発したV-Aバイパス
ローラーポンプは、脱血と送血の2機式です。患者の血液を体外へ引き出すのが脱血ポンプ。その血液を人工肺を通させてガス交換（血液中の二酸化炭素と酸素の入れ替え）して貯血槽に血液を貯める。その貯血槽に貯めた血液を患者に送るのが送血ポンプです。二のローラーポンプを使ってV-Aバイパスを行います。移動用ストレッチャーに組み込む為小さなローラーポンプ仕様となり補助流量は通常の6割とか7割程度でした。バッテリーとAC100Vの両用方式としました。
――目を離すことができない凝視作業からの解放へ
凝視作業からの解放を目指して自動化することにしました。リザーバーの5か所にレベルセンサーを付けました。一番下は最低レベル。ここを切ったらローラーポンプを止める。一番上はリザーバーが溢れちゃうから脱血ポンプを止める。あとの3つセンサーと合わせて自動的な運転を可能にしました。そうやってようやくリザーバーから目を離すことができるようになったんです。
――出血との戦いの中のV-Aバイパス
今と違って、当時の人工心肺は生体適合性の高い回路じゃありませんでした。抗凝固薬のヘパリン濃度を高くしないといけないんです。ヘパリン濃度が十分でないと貯血槽のような血液が滞留する部分で血液が固まっちゃうんです。ACT（活性化凝固時間）を長くするために抗凝固剤を使う必要があった。その影響で胸腔ドレナージのチューブから出血してきちゃうんです。だからポンプでその出血を吸引して、また貯血槽に戻す。そんな格好で補助循環を行ってきました。そのような出血との戦いのV-Aバイパスから3, 4年ぐらい経った頃、メーカーが遠心ポンプを使ったPCPS（経皮的心肺補助法）装置を発売しました。遠心ポンプはローラーポンプの様に、無理に血液を引いたり、送ったりしないんです。そうすると、むくみ（浮腫）が出てこない。通常の人工心肺の成績が上がってきたのもテルモというメーカーが世界で初めてフォローファイバー（中空糸型）の人工肺を作ってから。最初は内部灌流型（細い中空糸の中を血液が通る）だったのですが、内部灌流型は酸素化効率が悪くて、内圧が高いという問題がありました。その後、逆転の発想から外部灌流型（中空糸の中を酸素ガスを通して血液は束ねた中空糸の外側の隙間を通る）にしたのです。これができたら、酸素化が良く、内圧が低い、効率の良い人工肺が登場してきます。これによって充填量（輸液）がうんと小さくなります。輸液のボリューム（量）が小さければ小さいほど、患者に対する侵襲が小さくなるんです。僕らが最初に人工心肺業務をやった頃、人工心肺充填量は2,000 mlを超えていました。今は、昔の1/2の1,000 ml程度で心臓手術ができちゃう。これが非常に重要なことなんです。これによって無輸血手術ができる。輸血は治療行為としてやむを得ないことです。ただ、輸血というのは臓器移植と一緒ですから。人工心肺装置はそのボリュームをできるだけ小さくするということで輸血量を削減し、低侵襲手術に貢献できるんです。
――LVASとドナーハート
日本で心臓移植手術がままならない頃、LVAS（補助人工心臓）装着患者さんをアメリカとドイツに搬送するということになって、私は合計11症例の渡航による心臓移植を受ける患者さんに付き添うことになりました。これも私のライフワークの一つです。本来は集中治療室などで使用するLVASの駆動装置を、救急車や飛行機、そして、手術先の海外の病院の中にまで持っていって、移植ができるまでの間、LVASをつけた状態をサポートしました。飛行機に患者さんを載せるとなるとスペースも必要です。そのため、30席分を購入するんです。患者さんが寝るストレッチャーと駆動装置、バックアップ用の予備の駆動装置類は座席を取り払って設置する必要があるからです。あとは、スタッフで、医師2名、臨床工学技士2名、看護師2名、あとは家族です。飛行機もジャンボ機で、定格電流の周波数は600 Hzでした。日本国内では普通50 Hz、60 Hzですから1/10に落とさなければならないのです。その周波数変換器は政府専用機設置の３台のみであった。JAL（日本航空）のジャンボ機に政府専用機から周波数変換器を借用する必要があった。国会が開会中の政府専用機を使わないタイミングで地元の代議士さんを通して借りるんです。さらに、海外渡航当日は救急車を走らせ成田空港より、ドイツ、米国に行く為、埼玉県警、警視庁、千葉県警にお伺いを立てる。搬送中、患者さんがトイレに行きたくなっちゃった場合は、先導パトカーを運転する警察官にサービスエリアに寄りたいって言ってもダメなんです。全て救急司令センターを介して連絡しなければならないんです。飛行機内では振動が烈しく医療処置行為はできません。針さえ刺せません。狙っているところに針が行かないんです。非常用に何かあったときのために薬剤投与に使用する静脈ラインを確保しておかなければならないのです。
（2010年の改正臓器移植法が施行されて以降、国内での心臓移植が増加する中、埼玉医科大学病院も心臓移植可能施設となりました。）
埼玉医科大学で初めての心臓移植手術に私と奥村先生（当時MEサービス部員、現・臨床工学科専任教員）が臨床工学技士としてドナー心臓の摘出チーム（心臓外科医1名、看護師1名、臨床工学技士2名）の一員として関西の医療施設に行ったんです。私は、ドナーから摘出された心臓を病院から最寄りの飛行場までヘリコプター、そこからレンタルジェットで羽田空港、羽田空港からまたヘリコプターで宮沢湖ヘリポートへ。そして、最終は病院救急車でおおよそ2時間の搬送時間でドナーハートを埼玉医科大学病院に届けることができました。そういった仕事にも携わってきました。
高校生へのメッセージ
――臨床工学技士の仕事は深くて面白い！
医療職の中で唯一、工学的な知識があって、工学的に医療行為の面倒を見ることができる能力集団が臨床工学技士です。興味をもって、とことんやってみたいという信念がないとちょっと難しいかもしれません。一方で、なんとなく上辺で、「面白いかな」っていうところから深みに入っていくのもいいと思います。やってみて、醍醐味を味わう経験をもつことができれば、やる気がみなぎってくると思います。治療行為に関与できるのは医師と看護師、臨床工学技士です。怖がらず興味を持ってもらったら、こんなに面白い世界はない。それから、医療機器の管理業務は必要な領域なんです。ところが、医療の中で生命維持管理装置を動かしている施設は、医療施設の中で半分くらいしかないんです。あとの半分は臨床工学技士が従事していないところで医療機器を使っているんです。実はそういうところに、臨床工学技士が切望されています。臨床工学という領域は奥が深い。生命維持管理装置の新しい機械がどんどん出てきても、全て守備範囲に入ってきます。これは臨床工学技士の専売特許です。患者のための良い治療、それから検査につながるためには、臨床工学技士の働きがどうしても必要です。若い力が我々の後ろにどんどんつながって太い道を作っていって欲しいと願っています。
